三途の川のお茶屋さん
「なに、もう二十年一緒にいるんだ。語らずともなんとなく分かるものもある」
十夜はきっと何気なく口にした。
けれどその一瞬、私は想像した。ならば、十夜と共に更に月日を重ねたら? その時は隠し立てなんて欠片も通用しないくらい、全て見透かされてしまうんじゃないだろうか。
心に育ち始めた、十夜への恋心まで、余さずに全部……。
「幸子?」
「! あ、すいません!」
見れば十夜が洗った皿を持って所在なさげにしていた。私は慌てて布巾を持った手で皿を受け取った。
皿洗いは二人で熟せば、あっと言う間に終わってしまった。
それからしばらくは、ふとした瞬間に老婆から聞かされた伝言が思い浮かんだ。
けれど一週間もすれば、段々と記憶の彼方に追いやられる。
十日目になれば、思い浮かぶ事もなくなった。