三途の川のお茶屋さん



「どうじゃ十夜? 管理者としての職務は順調か?」

それは、俺が三途の川の管理者として赴任して十年程が経った日の事だった。

「神威様!」

なんの前置きもなく現れたのは、天界の最高権力者、大天神であらせる神威様だった。

俺とて大天神、権天神に継ぐ、七天神の一人。しかし莫大な神通力を有し、天界の頂点に君臨する神威様は、雲上人にも等しい。

七天神の俺でさえ、直接神威様にお会いしたのは三途の川の管理者を任命された時を含め、数える程だ。

「お陰様でつつがなく務めております。……しかし神威様がこのようなところまで、一体どうされたのですか?」

その神威様が訪ねて来られるなど、三途の川が干からびるのと同じ位あり得ぬ事だった。

白髪に長い髭を蓄えた神威様は、己の髭を遊ばせながら首を傾げた。






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