三途の川のお茶屋さん
太一様ほどの神だ。女神と番うチャンスは幾度かあった。けれど、夫候補者の中には、強硬な手段に走る血気盛んな者が多かった。半ば強引に女神を懐柔し、事実婚に丸め込む。
太一様はそれにより、番う機会をことごとく失っていた。
「太一様、女神のあるなし、子のあるなしなど関係ない。これまで貴方が成した功績は、全て貴方自身が積み上げてきた貴方の軌跡だ。貴方がこれまでの功績をふいにしてまで、女神に固執する意味はあるのでしょうか?」
女神と番える事は確かに栄誉だ。純血の子を持つ事は誉れだ。
けれど俺には、数百年一歩一歩積み上げてきた功績の方が、余程価値あるものに思えた。
「其方には永遠に分かるまい。……十夜、そこをどけ。私の目的は女神だ。其方とて、我と真正面から打ち合えば勝てるかは五分五分ではないか?」
太一様は揺らぎない目で、俺を見上げた。
「どきません。幸子は、俺が守る!」
俺もまた、太一様から視線を逸らさぬまま、告げた。
太一様との対峙は、避けられなかった。