三途の川のお茶屋さん
相手は天界第二位の権天神で、俺など足元にも及ばぬ積年の大重鎮。膨大かつ、老獪な神通力を展開されれば窮する場面も多々あった。
けれど俺とて、みすみす幸子をくれてやる訳にはいかなかった。
太一様から放たれた渾身の神通力を、後ろにたたらを踏みながらなんとか潰さずに受ける。受けざまに、その神通力を太一様に向けて弾き返した。
己の神通力を返されて、虚を突かれた太一様がほんの一瞬、怯んだ。その僅かな隙を見逃さず、俺は持てる神通力の全てを集約し、太一様の神通力に被せて放った。
俺の神通力は、太一様の胸を貫通した。
「う”ぁぁっっ……」
苦渋に満ちた、太一様の声が響く。
心臓を一刺しに貫かれ、太一様が倒れ込む。
太一様は目を見開き、定まらぬ目線で宙を見ていた。