三途の川のお茶屋さん


ビクン、ビクンと太一様の体が痙攣していた。すると太一様が纏う気に、徐々に変化が現れた。

神通力は、目に見える凶器とは違う。

奪うのは、命ではない。

神通力が奪うのは、神性。神としての、性を奪う。

太一様は神としての格を失い、只人へと変化する。見る間に太一様の神性は滅し、そこにはただ、老爺がいた。

「……太一様」

俺の横をすり抜けて、ゆっくりとした足取りで太一様に歩み寄り、その側にぺたんと膝を突いたのは、太一様が伴っていた使徒の娘。

「太一様、失礼いたします」

娘は一声かけ、伏した太一様の頭をそっと持ち上げて、膝に置く。小さな手を、半ば放心状態の太一様の額にあてた。



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