三途の川のお茶屋さん
「其方など側におろうがおるまいが、どうでもよいわ。……我が、我の隣にと望むのは、古の血を引く至高の女神だ。番のおらぬ我を高笑いした兄が、一族の恥と失笑した伯父上が一様に口を噤む、至高の女神でなければ……」
太一様が、力なく地面に投げ出していた手を持ち上げて、宙に翳した。
今はもう一切の神気を発しない、ただ皺がれた老爺の手。
「ははっ。我はやはり、所詮この程度であった。其方に対し、五分五分だなど、全くどの口が言ったのか……。やはり我は、永遠に女神に縁がない」
太一様は俺を一瞥し、自嘲気味に吐き捨てる。
その瞳には、言葉には表せぬ、ありとあらゆる苦渋が透けて見えた。
「兄や伯父上が、我を腑抜けと笑っておるわ。一族の看板を背負うに相応しくないとずっと言われ続けてきた。しかし只人に成り下がった今は、相応しくないどころか、家の名に泥を塗ってしまったな」