三途の川のお茶屋さん


娘は太一様の隣に並びきっぱりと言い切った。

「奇特な事だ。……小町、其方は若い。心変わりがあれば、いつでも申せよ。とはいえ、我は後生きて数年だろうがな」

微笑みを絶やさなかった娘は、今も微笑んだまま太一様を見つめていた。

娘の真摯な愛は、いつかきっと太一様の心を溶かす。これは神である俺の勘。

今はまだ、太一様の心は憤怒が燃え盛り、視界を曇らせているかもしれない。それでも、太一様はいつか、お気付きになる。

長く果ての無いように感じる神という存在にも、いつか終りは訪れる。死期は、ある。

神が過ごす数百年の年月は長く、その分、目は曇りやすく、真実は見えにくくなってしまう。

けれど最期のその瞬間は、神も人も、全てのしがらみから解き放たれて真に自由な存在になるという。



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