三途の川のお茶屋さん
騒がしく胸が早鐘を刻む。高鳴る鼓動を抑え、ゆっくりと幸子に手を伸ばす。
サラリと幸子の頬を撫で、ほつれ髪を耳に掛けてやれば、幸子の手が俺の手に重なった。柔らかな感触と温もりが、ますます胸を熱くさせた。
幸子は気持ち良さそうに俺の手を頬に引き寄せ、へにゃりと笑う。常よりも幼い口調と甘えた仕草に、夢うつつの事と知りつつも胸が騒ぐ。
「十夜、いなくならないでね? 私とずっと、いてね?」
!
歓喜に胸が、震える。魂が、揺さぶられる。
「幸子、……」
歓喜のまま俺の想いを重ねようと口を開いて、けれど聞こえてきたすぅすぅという寝息に言葉を詰まらせた。
幸子は瞼をぴたりと閉じ、笑みの形を残したまま眠っていた。
「……ずっと、いるさ。幸子が望む限り、俺から去るなど、あり得ない」
物言わぬ幸子の頭をもう一度、その感触と温もりを味わうように撫でた。