三途の川のお茶屋さん
「よっしゃ! これ、もろてくわ!」
ニカッと豪快な笑みを残し、おばさんはきな粉の団子を片手にテーブルに戻っていった。
チャキチャキの大阪弁のおばさんは、言葉は強いが全く怖い人ではなかった。
私は厨房の洗い場で、てんてこまいで端から使用済みの食器を洗っていく。
それでも食器は洗った側から使われて、また洗い場に戻って来る延々のループだった。
「アンタ、なに見てるん? へー! ロケットペンダントってまた、えっらい洒落たモン持ってるやないの!? ウチに見してみ!」
そんな時、唯一自由な耳が、厨房近くのテーブルで繰り広げられる会話を拾った。
「なんや写真の女、えらいおぼこいな? アンタ還暦にもなるんやない? 随分若い奥さんやないの~」
ロケットペンダント、かぁ。珍しい……。
生前の記録となるものを身に付けている人は稀にいる。それは生前のその人が、肌身離さず身に付けていたという事で、アクセサリーの類が圧倒的に多かった。