三途の川のお茶屋さん


「いえ、こそこそではなく……私はきっと、自分からはこういった事には気が回らないと思うんです。なので、もしかするとこれを提案してくれたのが、妻だったのではないかと……」
「へー! そりゃまた、なんちゅー出来た奥さんや! 傷心のアンタ、慰めてくれたんがきっと、今の奥さんなんやろなぁ。やっぱアンタ、いい女捕まえよったわ!」

一体どんな男性なのだろうかと、チラリと視線を向けてみたけれど、お相手の男性はこちらからは後姿しか見えない。

それでも、白いものが多く混じる頭髪はきちんと整えられていて、シックな色合いの背広姿は清潔感があって好感が持てた。

「えぇ、きっとこの写真の女性も、妻だった女性も、どちらもとても素敵な女性だったのだと思います。二つの愛を天秤にかける事はできないし、かける必要もないのですが、どちらもかけがえのない愛です。二つの出会い、二つの愛を知って、私はきっと二倍に豊かな人生を送ったのでしょう」



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