三途の川のお茶屋さん
「そりゃそやな~、どっちの愛にも優劣なんてつける必要あらへんわ。それにしたって、二つの愛を知って二倍に豊かな人生を送ったとは、よく言ったもんや!」
手にしていた湯呑みを、取り落しそうになった。
おばさんの言葉が、いや、男性が口にしたであろう言葉が、私の心に一筋の明光となって差す。
差し込んだ柔らかな光は、私の心を内側から温かに塗り替える。
「……って、待ってや。もう一度その写真、見してみ?」
今まさに二つの愛に思い悩む当事者だからこそ、共感以上に重く深く、測り知れない説得力と影響力でもって心に響く。
……愛は、その丈を競わせるものじゃない。
どちらの愛も、真実でいい。
二つの愛を知ったなら、その愛で心を二倍、豊かにすればいい……!
「この写真の女、ウチどっかで見てる気ぃするな? いや、見てる! それもつい最近や!」
「どこで見たんですか?」