三途の川のお茶屋さん


私はひそかに焦った。魂だけのお客様が体調不良を訴えた事はこれまでに一度もない。お客様が卒倒するのもまたしかり。

私は慌てて厨房から店内に回り、床に尻もちをついたおばさんに駆け寄った。

「アンタ! アンタさっきの旦那の、写真の女や!!」

え??
すぐには、おばさんの言葉の意味を理解する事が出来なかった。

「ウチがさっき話してた旦那、アンタの写真を後生大事に持っとった!!」
「! おばさん! その人はっ!?」

見渡す店内に、男性の姿はなかった。

「一足先に船に行きよったわ!!」

聞いた瞬間に、私は駆け出していた。



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