三途の川のお茶屋さん




私は十夜から聞かされた、悟志さんの寿命を知っている。

あと十年、悟志さんは来ない。

だからおばさんの語る男性は、悟志さんではあり得ない。

きっとこれは、おばさんの見間違いか他人の空似だ。

それならば、どうして私は店を放り出して埠頭に向かおうとするのだろう?

どうしてこんなにも、胸が騒ぐのか?


「臨時便、定員につき出航いたします!」


転がるように店を出たところで、出航を告げる船頭の声が高らかに響き渡った。今日は懸人さんの漕ぐ定期運航便の四便だけでは回らずに、船が増便されている。

!!
臨時便の船尖に立つ見知らぬ船頭さんが、オールで船を漕ぎ始めるのを視界に捉えた。



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