三途の川のお茶屋さん
「悟志さん! 悟志さんっ!! 悟志さーーーーんっっ!!」
私は声の限りに叫んだ。
これまでの人生で上げた事がないくらい、声を張った。
すると件の男性が人の隙間から垣間見える!
男性がこちらを振り返る! あぁっ、男性の顔を一目、見せてっっ!!
!!
私は力なく、埠頭に頽れた。
遠ざかる船は、もう肉眼では見えなかった。……同様に、遠すぎる男性の顔もまた、見る事は出来なかった。
男性は最後の瞬間に確かにこちらを振り返った。けれどその顔を、見せてはくれなかった……。
埠頭に膝を突いたまま、私は何も考える事が出来なかった。