三途の川のお茶屋さん
「幸子さん!? 一体どうしたの!?」
!!
肩を叩かれて、顔を上げた。
「け、懸人さん……」
上げた視界に、心配そうに私を覗き込む懸人さんの姿が飛び込んだ。
そうして懸人さんの後ろには、乗船を待って列を成す多くのお客さんがこちらを見つめていた。
「幸子さん、一体何があったの? 緊急事態なら、十夜を呼んで来ようか?」
! そうか!
管理者の十夜は、船を呼び止める術を持つのか……!
けれど懸人さんは、十夜を呼んで来ようかと、そう言った。十夜は、いない??
「……十夜は、どこに? ここにはいないんですか?」
「今日は続々と死者の魂が押し寄せていますからね。三途の川から魂があぶれてしまわないように、十夜は人界との境に誘導に向かいました」