三途の川のお茶屋さん
答える懸人さんの額には、汗が滲んでいた。
「ねぇお兄さん、儂ら次の船にはちゃんと乗れるんだろうね?」
「って、アンタね! 皆こうして並んでいるんだよ? 割り込みをしないどくれよ!」
そうこうしている間にも、懸人さんに向かって埠頭の方々から声があがる。私は一度、ギュッと目を瞑った。
「懸人さん、お騒がせしてすいませんでした。私は大丈夫です。十夜を呼ぶ必要もありません」
そうして再び瞼を開けると、私は真っ直ぐに懸人さんを見つめて告げた。
力の抜けた足も踏ん張って、スックと立ち上がる。
「でも、……幸子さん本当にいいんだね?」
埠頭にいた懸人さんはきっと、取り乱した私の一部始終を見ている。
懸人さんは心配そうに眉を寄せ、再度確認をくれた。
「はい! 忙しいところすいませんでした!! 私も、お茶屋に戻りますね!」