三途の川のお茶屋さん
長く手を合わせ、伏せていた顔を上げた時、夕日は完全に沈んでいた。
「! 十夜……」
隣にはいつの間にか十夜がいた。私に寄り添って、静かに手を合わせる十夜の姿があった。
「幸子、今日は大変だったろう」
閉じていた瞼を開け、合掌を解いた十夜は、静かな笑みをのせて私の肩をそっと叩いた。
「十夜も、お疲れ様です」
「ふむ、今日はお互い大忙しだったな……」
十夜の笑みの裏に、色濃く疲労感が滲む。
そんな十夜を目の当たりにすれば、つくづくあの時呼びに行かなくて良かったと、心の底から安堵した。
「けれど何とか無事に全員を送り出す事ができました」