三途の川のお茶屋さん
赤銅色の濃い肌に、灰色の短髪。整った目鼻立ちの青年は、十夜によく似た長衣を纏っていた。けれどその人は着崩さずに、キチンと襟元まで留めて着ていた。十夜はいつも、インナーの上にザックリと羽織っている。
「あ、十夜なら船の修繕に行っています」
リードで繋がれた足元の犬も、落ち着いて二度見をすれば、普通の犬ではあり得なかった。
……あれ、狛犬ってやつだよね? その犬のもくもくと渦巻く側頭部や尾は透き通り、有機物であるのかすら怪しかった。
「昨晩の豪雨で川が荒れていて、流木か何かが出航前の船を傷つけたようなんです。運航は代替えの船を呼び寄せて、事なきを得たんですが、十夜は今日中に直すって意気込んでました。だから少し、時間が掛かると思います」
十夜に用事ならば、直接行ってしまった方が早い。
「そうですか、雨の被害もありましたか。それから、三途の川は連日忙しかったと思いますが、状況はいかがですか?」