三途の川のお茶屋さん
けれどそれは、考えが甘かったのだろうか。
「これらを総合すれば、ひとつの仮説が浮かびます。閻魔帳を呼び寄せて、十夜は貴方に婚約者だった悟志という者の寿命を告げたのではありませんか? それを聞き、貴方は三途の川で婚約者を待つ決断をした。十夜がかつて告げたであろう、三十年という時を」
仁王さんは私に聞いているようで、聞いていない。
既に、確信しているようだった。
「けれど十夜は、直接生者の寿命を管轄する部署にない。だから閻魔帳の寿命をさも、確定事項のように貴方に告げた」
胸が、煩く騒ぐ。
「それはもちろん、間違いじゃない。けれど、閻魔帳の正確性は100%ではありません。実際は99.9%です。一見すれば高いように見えるでしょう? だが、裏を返せば1000人に1人は閻魔帳とは異なる寿命を辿るという事です」