三途の川のお茶屋さん


……私は、なんて薄情な女なんだろう。

閻魔帳があった? いいや、そんなのは言い訳にもならない。

他ならない悟志さんが、私のほんの数メートル先にいた。

歩み寄れば、触れられる距離。声を掛ければ、会話を交わせる距離。

こんなにも近く、悟志さんはいた。どうしてそれと、気付けなかった……。

どうして……。

灰色の闇が、私に牙を剥く。私という厭わしい存在を、真っ黒に塗りつぶす。

心が、闇に寝食される……。


「きゅーん、きゅーん」


耳にした瞬間、纏わりつく闇が遠ざかる。

「……コマ、ちゃん?」



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