三途の川のお茶屋さん
第五章





両手にそれぞれ大型スーツケースを引き、背中にも大荷物を背負って、その人はやって来た。

「ごめんくださーい。いやはや三途の川は存外に遠い。この大荷物では重いのなんのって、腰が痛くなってしまったわい」

……これはまさか、営業さん?

正直困った。業務用の団子粉や砂糖、茶葉なんかは全て決まったところで纏めてお願いしている。

たとえ低価格を提示されたとしても、今更新しい取引先を増やすつもりはない。

何よりここ『ほほえみ茶屋』は、元々稼ぎは二の次三の次、なのだ。

「ええっと、とりあえずお茶を飲みませんか? 喉、乾いているんじゃないですか?」
「! おお、それはありがたい!」

けれど額に汗をだらだらと垂らし、ヒーヒーと息を荒くしている営業さんが、なんだかちょっと不憫になった。



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