三途の川のお茶屋さん
……え?
目の前が、真っ暗に染まった。
「このご時世ですから、なかなかこのように気前のいい注文は、いただけるものではございません。ですのでついつい、気張ってしまいました。いやはや、それにしたってよほど懇意にしている女性なのでしょうなぁ。まったく十夜様も隅に置けませんな……っと! 私ときたらペラペラとお客様の事を、失礼いたしました。まま、ここはひとつ、ここだけの話という事でお願いいたします」
……十夜が、懇意にしている、女性?
バクバクと心臓が早鐘を打つ。
「おぉ、そうだそうだ。貴方にも一部、カタログを置いていきましょう! もし気に入った品があればいつでもご連絡お待ちしております。価格も精一杯勉強させていただきますので」
営業さん改め、呉服問屋さんは、スーツケースを一台開けると、ファスナーポケットからカタログを一部取り出して、私に差し出した。
「あ、どうも」