三途の川のお茶屋さん
「触らないでっ!」
パシン!
乾いた音が、響く。
無意識の行動だった。
気付いた時には差し出された十夜の手を、振り払っていた。二人の間の空気が、一瞬凍り付いた。
十夜はもちろん、私自身、自分の取った行動に愕然とした。
「すまない、俺が触れない方がいいなら触れない。幸子、どこが痛い? どこが辛いんだ?」
! ……涙が、滲んだ。
先に持ち直したのは十夜で、しかも十夜はあんな態度を取った私に、優しかった。
だけど今は、そんな十夜の優しさにも心が軋みを上げる。
「……ごめんなさい、十夜。どこも痛くないし、辛くない」
私は精一杯の虚勢を掻き集めて、体裁を繕った。
「そうか、立ち上がれそうか?」
虚勢をはった私に、十夜は追究をしなかった。