三途の川のお茶屋さん


「「……」」

十夜も当然、思っているはず。沈黙が、何よりも物語る。

三途の川には基本、お爺さんお婆さんばっかりだ。

「すいません! 名前を聞き忘れました。……あの、とっても綺麗な着物を着たお婆さんでした」

私、とんだ阿呆だ。

こんな半端な取次って、あり得ない。

素直に謝罪して、せめて、記憶の中のお婆さんの特徴を伝えた。

「ふむ、まぁ会えば分かる」
「ほんと、すいません」

私、残念過ぎる。

身を縮め、十夜の後に続いた。


そうして半歩先行く十夜が、『ほほえみ茶屋』の入口の引き戸を引く。

「おぉ、十夜やっと来たか」

待ちかねた、とばかりにお婆さんは席から立ち上がり、十夜を出迎えた。



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