三途の川のお茶屋さん
「……よくぞ貴方が十一枚で済ませてくれましたよ」
「ちょいと遠慮してしもうたわ」
タツ江さんに、十夜が誂えた着物!
点が、線になって結ばれた。
その後も十夜とタツ江さんはしばらく話していたけれど、それ以降の会話は一切耳に入ってこなかった。
「幸子、年寄りを一人で帰すのも心配だ。タツ江婆を送って来る」
十夜が厨房を覗き込んで告げた。
「はんっ、よくもまぁアタシを捕まえて年寄りだなどと言いおってからに」
「どこからどう見ても、年寄りでしょうに。……幸子? どうかしたのか?」
「! いえ、何でもありません。気を付けていってらっしゃい」
私の様子を訝しげに見つめる十夜に、慌てて取り繕った。
「ほれ十夜、その風呂敷包みを持っとくれよ。アタシゃ、年寄りだからね」