三途の川のお茶屋さん
「幸子、今日の営業に支障ないか?」
「はい、大丈夫です。気を付けていってらっしゃい」
「……そうか。すまないな、いってくる」
今度こそ、連れ立って店を出る十夜とタツ江さんを見送った。
二人が店を後にした瞬間、全身に震えが走った。
私がした、あまりにもお粗末な早とちり……!
不甲斐ない自分自身への嫌悪と、十夜への申し訳なさに、押し潰されそうだった。
固く拳を握り締めて、唇を噛みしめて堪えた。
私はなんとか最終の船までを、送り出してみせた。
意地でも『ほほえみ茶屋』の営業をやりきってみせたのは、これ以上、十夜に醜態を晒す訳にはいかないと分かっていたからだ。