三途の川のお茶屋さん
俯きがちに紡いだ私の声は、ひどく掠れていた。
「そうか。まぁ、掛けて話すか」
十夜は手近な椅子を引くと、私をそっと掛けさせた。十夜ももう一脚椅子を引き寄せて、私の隣に腰を下ろした。
閉店後の店内で、私は十夜と二人、静かに肩を並べていた。
十夜は急かさずに、静かに私の言葉を待っていた。
「どうやって謝ろうかって、ずっとそればかりを考えていました……」
ひと呼吸おいて、隣の十夜を見上げた。穏やかに凪いだ十夜の瞳に励まされ、私はついに口を開いた。
「十夜、一昨日、ここに呉服問屋さんが来ました。その人から、十夜の依頼でタツ江さんという女性のところに着物を誂えに行くと、聞いたんです」
十夜は静かに頷いて聞いていた。
十夜は私の愚かな勘違いに、まるで思い至っていない。
当たり前だ。こんな短慮、十夜には想像も出来ないだろう。