三途の川のお茶屋さん


その翌朝、俺の元に、上流の堤防に亀裂が見つかったという第一報がもたらされた。

ちょうど今日で、太一様の襲撃から二週間が経っていた。この二週間の、最初の頃に二度、上級神が幸子を狙ってやって来ている。けれどそ奴らの神通力は太一様に遠く及ばず、俺の敵にはなり得なかった。

それ以降、幸子を狙う不届き者はパタリと来ない。

その裏には、太一様を退けた俺の神通力が天界で知れ渡ったのみならず、神威様の何某かの働きかけがあった事は間違いなかった。

……この状況ならば、幸子に付きっきりでいなくとも問題はないか。

四六時中幸子に付き従っていたために、職務に滞りが出始めていた。茶屋の近辺に張り付いていてはどうしたって、出来る仕事が限定される。

これまでは騙し騙しにきていたが、上流にある堤防の亀裂の確認となればそうもいかない。

「幸子、今日はどうしても外さねばならん。懸人にも一声掛けておくから、万が一、急ぎの用事があれば懸人を頼ってくれ」

幸子を茶屋まで送ったところで切り出した。



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