三途の川のお茶屋さん
……なんだ?
『ほほえみ茶屋』を中心に、雑多とした気配が溢れていた。そのひとつひとつを見れば、なんの変哲もない死者の魂だ。
けれどいかんせん、その数が多すぎた。
多くの気配の中から幸子の気配を探るが、雑多とした気配に埋もれてか、見つけ出す事が出来ない。
焦る心のまま、『ほほえみ茶屋』に走った。
「どいてくれ!」
急く心のまま、軒先まで溢れる人を掻き分けて、茶屋の中に足を踏み入れた。
「幸子? 幸子!? いないのか幸子!?」
厨房に向かって呼び掛けたが、幸子の姿はない。
厨房の中、調理台はあんこや醤油ダレの垂れ零しで、汚れ切っていた。銀のバットに保存されている団子は一本も残っておらず、あんこや醤油ダレの空容器、シュガーポットまでが無造作に転がっていた。