三途の川のお茶屋さん
「いいえ、幸子も行方が知れません。状況を鑑みれば、懸人が幸子を連れ去ったとみて間違いないでしょう」
天界の上級神でも、身の程知らずの同期らでもない。
危険はもっと、身近に潜んでいた。日々顔を合わせ挨拶を交わし、こちらの懐に入りながら、懸人は虎視眈々と幸子を狙っていた!
確かな違和感はあったのだ。なのに何故、俺は違和感を違和感のままに捨て置いたのか!
後悔が、我が身をジリジリと焼き尽くす。
「……そうか、船の捜索にすぐに人員をあてる。十夜、其方はもう一度三途の川を捜索してみろ。出航したと見せかけて、そちらに潜んでいる可能性もあるかもしれん」
「いいえ仁王様、俺には分ります。三途の川に幸子はいません」
仁王様の助言に、俺は首を横に振る。