三途の川のお茶屋さん
私だって、十夜と離れたくなんかない。
「……分かりました。タツ江さん、必ず十夜と相談して、お礼をさせてもらいます」
「いやだよこの娘は。団子の礼だって言ったじゃないかい。礼に礼なんてされちゃ、困っちまうよ。だからこれきりに、しとくれよ」
タツ江さんの告げる「これきり」がとても重く、頭の中で反響していた。
「さ、もたもたしてる間はないよ。もうじき船が、接岸するよ」
タツ江さんは、船の内壁に嵌め込まれている予備のオールを握り締めた。
対岸が見えた。白く靄がかかり、対岸の状況は見通せない。