三途の川のお茶屋さん


だけどふんわりと、胸が温かになる。それはまるで、懐かしい故郷に戻ってきたかのよう。

ここは魂が還る場所。だからここは皆人の故郷に他ならない。

そしてこの場所は、かつて赤ん坊の私が、兄の手で落とされたところ……。

鼓動が煩いほどに早鐘を刻む。荒い呼吸を落ち着けるように、ほぅっと大きく一息吐いた。

失った意識の中で、私は久しぶりにあの夢を見ていた。

病床でよく見た夢。三途の川に来てからも見た、あの夢。

けれどいつも同じはずのあの夢は、今日に限っては同じじゃなかった。

落ち行く私の網膜上、初めて兄の顔が映っていた……。




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