三途の川のお茶屋さん
ガタン、ガタンと船が揺れる。
聞かされずとも、その揺れ方で知れた。船はついに、対岸に接岸したのだ。
けれど船というのは、接岸したからといってすぐに下船できるものではない。係留するために、船を固定する必要がある。
長椅子の下から覗き見れば、懸人さんはロープを掛ける為、対岸の係船柱に向かって身を乗り出していた。
「あたしが懸人を下ろしたら、すぐに船を出すんだよ? いいね!」
タツ江さんが私に言い残し、懸人さんの背中に向かって駆け出した。
タツ江さんの手は、オールを握り締めていた。そうしてタツ江さんは大きく振りかぶったオールを、懸人さんの後頭部目掛けて振り下ろした。
「ァグッッ!!」
っ!!
オールは、気配に振り返った懸人さんの側頭部を直撃した。