三途の川のお茶屋さん
「……運命とは無情だね。どこまで巡っても、やはり私は永遠に幸福なゴールに行きつけない……」
十夜にしがみ付いたまま、目線だけ巡らせる。懸人さんは投げ飛ばされ、船壁を背に空虚に宙を見つめていた。
……今ならば分かる。懸人さんはいつも、一見すれば穏やかに笑っていた。けれどその瞳は過去に囚われて、今を映してはいなかった。
懸人さんはただ、過去の栄光に向かって微笑みを浮かべていたのだ。
「っっ、とにっ! 馬鹿をお言いじゃないよ!」
ピシャリと言い放ったのは、川から船縁にしがみ付くタツ江さんだった。
「っっと、どっこいしょっこらしょっ! そもそもね、幸福なゴールが用意されているなんて、ありゃしないよ! 神も人も、皆自分の未来は自分で切り拓くのさ! それが分からないから、お前さんはいつまでも貧しい心から脱却できないのさ!!」