三途の川のお茶屋さん
十夜が慌てて手を差し伸べようとしたけれど、タツ江さんは盛大な水しぶきを散らしながら、自力で船に乗り上がった。
そうしてタツ江さんは一直線に懸人さんに向かうと、その横面を張り倒した。
「懸人、お前さんの両親がどれだけお前さんを想っていたか、分からない訳がないだろう!?」
「タツ江……」
私も十夜も、当の懸人さんまでもが、タツ江さんの勢いに圧倒されていた。
私の知る飄々としたタツ江さんとは、まるで別人を見ているようだった。
「両親や周囲の者がお前さんの嘆願に方々に手を尽くし、結果としてお前さんは阿修羅の道に落とされず、船頭のポストを宛がわれていたんだろうに。……だけどもう、ここまでだね。お前さんはやっぱり、最初から阿修羅の道に落とされて、魂の研鑽を積むべきだったのかもしれないね」