三途の川のお茶屋さん
タツ江さんがまるで、後は任せろ、とでも言うように、私と十夜に向かって力強く頷いて見せた。
懸人さんはもう、何を言うでもなかった。ただ静かに、タツ江さんの腕に抱かれていた。
二人の体を、禍々しい光の渦が包む。……これが二人との、一旦の別れになる。
「三途の川で出合った懸人さんに『ほほえみ茶屋』が死者の魂に癒しと潤いを与えているって言ってもらえて、救われた気持ちがしました。懸人さんの言葉で、私という存在がこの地に赦された気がしたんです」
居ても立っても居られずに、私は懸人さんに語り掛けていた。伝えずにはいられなかった。
「……お前はどこまでもお目出度い思考をする。だけど私は、そんなお前が疎ましかったよ」
……疎ましい。懸人さんに、いいや、血を分けた兄に告げられた言葉が胸を抉る。
けれど、『ほほえみ茶屋』が『ほほえみ』を提供していると言ってくれたのもまた、懸人さんなのだ。