三途の川のお茶屋さん
十夜なら、否やは唱えない。
隣りの十夜を見なくても分かる。十夜も私と共にこの地にある事を望んでくれる、そんな確信にも似た思い。
十夜と二人、この地で永劫の時を過ごす事は幸せ。もちろんずっと先、未来の事は分からない。
けれどその場所がどこであろうと、私と十夜は手を取り合って寄り添って、喜びと慈しみに満ちた日々が送れる。
「はい、今度は私が懸人さんを待っています! そうして三度目の正直、次に見えた時は、新しい関係で向き合ってみませんか?」
けれどこの問いかけに、懸人さんから答えを聞く事はできなかった。
抱き合う懸人さんとタツ江さんの全身が、すっぽりと渦に包まれたと思ったら、瞬きの後にはもう二人の影も形もなくなっていた。
まるで存在自体が夢まぼろしであったみたいに、二人の姿は消えてしまった。