三途の川のお茶屋さん
2
懸人さんとタツ江さんが光の渦に呑まれて消えてしまっても、私は二人が消えたあたりに向かいずっと祈りを捧げていた。
「幸子」
十夜に肩を抱き寄せられて、私はずっと垂れていた頭を上げた。
見上げた十夜は、包み込むように優しい目で、私にそっと微笑んだ。
「なに、心配せずとも二人は大丈夫だ。もちろん阿修羅の道は長く険しい。けれど幸子の祈りが、阿修羅の道を行く二人の足元を照らす。祈りの燈火を頼り、懸人とタツ江婆はいつか三途の川に戻る。いつか来る未来、幸子は必ず『ほほえみ茶屋』で、二人と再会を果たす事になる」
十夜がくれたのは曖昧な慰めでなく、力強い断言。
「十夜……」
言葉にはきっと、魂が宿る。
十夜の言葉は言霊になって、私の胸にふんわりと沁み込んで居場所を作る。
そうすれば胸に巣食う不安が、瞬く間に昇華する。