三途の川のお茶屋さん
「十夜っ! 十夜ともう会えないなんて絶対に嫌だった! 十夜の事、忘れたくなんてなかった! 十夜と離れたくなかった!! 十夜と引き離されるのが怖かった、怖かったっ!!」
圧倒的な歓喜と、巡るありとあらゆる激情のうねり。到底、抑える術などなかった。
十夜の胸に縋りつき、喚くように思いの丈をぶつけながら泣いた。
「幸子、離さない! もう一時だって幸子を離さない!」
けれど私をきつく抱く十夜の腕も、小刻みに震えていた。
「幸子を誰にだってやるものか! 俺と夫婦になって、生涯俺と共にあれ!! 受け止めてやる! あと十年、悟志の亡霊を心に飼っていてもいい、幸子が心に飼う悟志の亡霊ごと俺が受け止める!!」
熱く、狂おしいほどの激情が私を焼き尽くしそうだった。
「……十夜、愛してます。今この瞬間、十夜を愛する心に、悟志さんは介在しません。十夜への愛が全てです!」
「幸子っ!!」
十夜が勢いで、私を掻き抱いたまま持ち上げる。ふわりと体が宙に浮き、視界がグンッと高さを増した。