三途の川のお茶屋さん


「っ、……!?」

そうして高さを増した視界にまず飛び込んだのは、十夜でも川でもない!

私を真っ青にさせたのは、生温い笑みを浮かべた好々爺!

目にした瞬間、歓喜も激情も吹き飛んだ。

「と、ととっ、十夜っ! 十夜っ!!」

一拍の間を置いて、私はバッシバッシと十夜の腕を叩きながら叫んだ。

私の素っ頓狂な叫びが周囲に木霊する。

「ん? ……あぁ、神威様がいらっしゃったか」

けれど、老爺を一瞥した十夜は、焦るどころか不満そうに呟いた。

私は十夜をせっついて、その腕から飛び降りる。

「十夜、少しは取り繕ってみせんか。そうあからさまに年寄りを邪険にするものではない」
「コホン。さて、何の事か分かりませんが、お待たせしてしまって申し訳ありませんでした。けれどそのように背後で待たれていませんと、声を掛けて下さればよかったでしょうに」



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