三途の川のお茶屋さん
「あ、起きてます。ちょっと考え事をしちゃってて……すぐ下りて、朝ごはんにしますね!」
壁掛けの時計を見れば、いつもならとっくに朝食の準備をしている時間だった。考えても答えの出ない堂々巡りに、随分と没頭してしまったらしい。
「いや、具合でも悪くして起きられないのではないかと気になっただけなんだ。何でもないのなら急がなくていい、朝飯などある物で構わん」
これは十夜の優しさだ。
三途の川にあって、体調不良という事はあり得ない。
ならば十夜が心配したのは私の精神面。
かつてのように、私が一人泣いていやしないかと、そんなふうに気を回してくれたのだろう。
ここに来た当初、私は夜が来るたびに枕を涙で濡らしていた。
けれど一年が経ち、二年が経ち……。三途の川で過ごす月日に反比例をするように、泣き濡れて目覚める朝は減っていった。