三途の川のお茶屋さん
十夜は蕩けるような優しい笑みで、涙の滲む目元に唇を寄せる。
「それと幸子、『ほほえみ茶屋』をライフワークとしているのは幸子だけではないぞ? 幸子が大切と思う全てが、俺にもまたかけがえなく大切だ」
熱い涙が珠になって頬を伝う。十夜が唇で拾うのでは、もう間に合いそうもなかった。
「十夜、愛してます。今までも、これからもずっと。十夜を愛しています」
「幸子、俺の方が幸子を愛してる」
流れる涙はそのままに、溢れる愛を伝え合うように、私達は唇を寄せ合った。
変わった事、変わらない事。出会った人、別れた人。
時間の流れがあってないような三途の川でも、日々を過ごすという事は、人の世に生きるのと同じに目まぐるしいのだと私は思う。
「お姉さん、団子ちょうだい」
「はい、ただいま」