三途の川のお茶屋さん
軽快な返事とは対照的に、もうじき八ヵ月になる私の動きはちょっと重たい。あと数日で、産休に入る。もちろん産後に復帰はするが、『ほほえみ茶屋』としばしのお別れと思えば、少し寂しい思いもある。
随分と大きくなったお腹を擦りながら、ゆっくりとした足取りで厨房に向かう。
「幸子、俺がやる。幸子は座っていろ」
「十夜……」
十夜は私の肩を抱くと、厨房の隅に誂えた休憩用の椅子に座らせた。私の妊娠が分かってからの十夜は、甲斐甲斐しすぎるくらいに、甲斐甲斐しい。
「ありがとう、十夜」
とは言え、正直ずっと立っているのはしんどくて、十夜の気遣いに素直に甘えた。
「幸子は頑張りすぎだ。無理をするなよ」