三途の川のお茶屋さん
一途な愛を貫きたいのに、その思いとは裏腹に、日に日に十夜への想いが膨らんでいく。その想いがいつか、堰切って溢れ出てしまうのではないかと、私は恐々としてる。
「ごめんなさい……」
悟志さんが、大好きだった……。悟志さんを、愛していた……。
だけど二十年の年月が、当時の激情を穏やかな思い出に変えてしまう。
悟志さんの感触や温度、匂い、記憶に残るそれらにも、激情が迸る事はない。熱く燃え上がらせるには、二十年前の思い出は遠すぎるのだ。
「なんて薄情な、女なんだろう……」
滲んだ涙は一滴、球になって頬を伝った。雫はそのまま、スゥっと枕に染み込んだ。