三途の川のお茶屋さん
ホッと安堵の息を吐いて、止まっていた足を進める。十夜も一緒に、歩き出す。
「……」
「……」
どちらも無言のまましばらく歩を進めれば、『ほほえみ茶屋』の店先に着いてしまった。
「十夜、何だかよく分かりませんが、もう二十年間一人で切り盛りしてきてるんですから、今更の人員補充は検討していませんよ?」
「あ? あぁ……」
悪戯めかして告げれば、これまた十夜の食いつきが鈍い。
「それじゃ私、開店準備がありますからこれで」
十夜の真意が分からないけれど、このまま入口の前に立っていても埒が明かないと判断した。挙動不審な十夜に見切りをつけ、開店準備に取り掛かった。
「幸子」
すると再び、十夜が店内に顔を出す。
「十夜? 何か忘れ物ですか?」