三途の川のお茶屋さん
「はははっ、ねぇ幸子さん。死者の魂は、悼む心を受けて輝きを増すんです。美しく彩られ、新たな生に向かいます。けれど全部が全部、手厚く弔われる訳じゃない。そんな魂に、幸子さんの『ほほえみ茶屋』が癒しと、潤いを与えているんですよ」
懸人さんが、静かに言い募る。
「もし、そうなら嬉しいです」
「団子と煎茶だけじゃない、『ほほえみ茶屋』は店名の通り『ほほえみ』を提供しています。だから自信を持って下さい」
「ありがとうございます」
凄く、嬉しい言葉だった。
まさに私は、そんな思いで『ほほえみ茶屋』を始めたのだ。
「だけど懸人さん、懸人さんの仕事だってとても尊いものだと思います。訳の分からない書類をペラペラ捲ってる十夜とは違って、実際に額に汗して船を漕いで、死者の魂を次の生に送り届ける功労者です!」
悪戯めかして語ってみたのは、どこか影を帯びる懸人さんを励ましたい思いから。