三途の川のお茶屋さん


とても重い言葉だった。そして裏を返せば、生は不平等だと、そういう事なのか。

何故だろうか? オレンジ色に差し込む西日がひどく情感を刺激する。心に感傷を、呼び起こす。

十夜は無言で、私の肩を抱き寄せた。肩に触れる十夜の手のひらから、温もりが伝わった。

「十夜……」

抱き合えば、触れ合えば、温もりが沁みる。愛情が芽生える。

だけど温もりと愛を求めながら、孤独の中で幕を閉じた命もあった。

私は『ほほえみ茶屋』を開店して間もない頃に出会った、あるお客様を思い出していた。

彼女との出会いが、この地で数多の魂を見送る重さと覚悟を、教えてくれた。

当時を思い出せば、私の目頭がジンと熱を持つ。私はそっと瞼を閉じた。




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