三途の川のお茶屋さん


その子の来店は、他のお客様から聞かされて知った。

「ねぇお姉さん、店先に薄汚れた子がまだいるよ。俺が来た時にもいたんだけど、早く追いやった方がいいんじゃないかい? かなりその、臭ってるよ?」

会計を済ませて一度店を出たおじさんが、戻ってきて私に告げた。

「え? あ、はい。私が行って見てみます。お客様はどうぞ、船に行かれて下さい」
「そうかい? それじゃあね」

おじさんは店を出ていった。私は濡れ手を前掛けで拭い、店の軒先に回った。

すぐに、汚れ切った男の子がしゃがんでいるのに気付いた。男の子とはかなり距離があったのだけれど、鼻をつく異臭がこちらまで漂っていた。

「ねぇぼく、お腹、空いてない?」

私は男の子に歩み寄って、問いかけた。

男の子は顔を上げ、私をジっと見つめていた。もちろん三途の川にあって、男の子の目は実際に私を見てはいない。



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