三途の川のお茶屋さん


けれど男の子の人を窺うかのような行動は、染み付いたもののように感じた。

余りにも長い間が空くので、もしかして男の子が言葉を話せないのではないかと、私は本気で心配になった。

「……うん。空いてる」

! 男の子の声を聞いた時、私は心底ホッとしていた。

「そっか。私、お団子屋さんなの。お団子を食べよっか?」
「うん」

「少しだけ待っててね?」

船が出航するタイミングで、店内にちょうどお客様はいない。とはいえ曲がりなりにも飲食店に、悪臭を放つ状態の男の子を入れる事は憚られた。

男の子の見た目は三歳くらいで、体格はとても小さい。

私は大急ぎで厨房に戻ると、大きな盥と石鹸、タオルを抱えて男の子の元に戻った。

「ぼく、お洋服、脱げる?」

男の子はジーっと私を見上げ、コクンと頷いた。

「よしっ、いい子」

その間に私はもう一度厨房に取って返し、両手でバケツ一杯のお湯を持って男の子のところに戻ってきた。

「……っ! さっ、さぁっ、お湯を掛けるよ? ギュッと目を瞑っていてね?」

目に飛び込んだ、汚れ切り、痩せ細った体。



< 64 / 329 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop