三途の川のお茶屋さん
涙が出そうになった。
そうしてざんばら髪で垢だらけのその子は、男の子じゃなかった。
……女の子、だった。
私は精一杯の平静を装って、涙を堪えて笑ってみせた。
「ほぉら? 目に滲みちゃうよ?」
けれどその子はジーっと私を見つめて、なかなか目を瞑ろうとしなかった。
「……うん」
やっと目を瞑るのを確認して、お湯で流す。石鹸を使って、髪も体も、洗っては流すを繰り返した。
何度も繰り返して、やっと女の子は本来の肌の色を取り戻した。石鹸はまるまる一個を、使い切っていた。
タオルで女の子が体を拭く間に、私は後始末を手早く済ませる。
「きれいになったね。後はお店の中で乾かそっか? おいで」
そうしてタオルで包んだ女の子を、腕に抱き上げた。
すると抱き上げた瞬間、腕の中の女の子が体を硬くした。瞳が零れ落ちそうなくらい、目を見開いて私を見つめていた。